【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第10章 Come To Me, My Love
「では、俺はここで」
エルヴィンはそう言いながら、審議所の外に待たせている馬車を指差した。
「俺は今晩、ナイルの家に泊まることになっている」
「へぇ? エルヴィンとナイルって仲が良かったんだね」
ハンジは意外そうに目を丸くした。
「ああ、訓練兵からの仲だ。最近、奥さんとの間に二人目が生まれたらしくてな。顔を見ていこうと思う」
「そう、おめでとうと伝えておいてね」
ああ、そうか・・・
いつもと違って力無く笑うエルヴィンを見て、リヴァイは直感的にそう思った。
お前が言ってた酒場の女って、ナイルの嫁さんのことか。
そりゃ辛ぇだろうな。
「ガキの顔みたらさっさと寝ちまうことだな。深酒なんかするなよ」
どうせ余計に辛くなるだけなんだから。
「リヴァイが俺を気遣ってくれるとは意外だな」
「まぁ、アレだ。俺の我儘が不問になるよう、いろいろと進言してくれたことへの礼だ」
エルヴィンは“そうか”と言って馬車に乗ると、石畳の街に消えて行った。
夜、月明かりがほとんど無い中で馬を走らせるのはいつもの何倍も苦労する。
結局、ハンジも遅いからとの理由で宿に泊まっていくことにしたので、リヴァイは一人、調査兵団の兵舎に戻るために道を急いでいた。
サクラは待ってくれているだろうか。
あいつは、俺に遠慮しているところがある。
“リヴァイ兵長”
声を思い出すだけで、こんなに身体の芯が熱くなるというのに。
どこまでそれを理解しているのだろうか。
すぐにでも抱きしめたい。
でもその前に、笑顔を見せて欲しい。
もし自分の部屋にいなかったら、サクラの部屋にまで行ってしまいそうな自分がいる。
我慢の限界なんか、とうに超えていた。