【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第10章 Come To Me, My Love
「サクラ」
リヴァイはサクラを抱きながら外に出ると、不安そうにしている顔を右手で撫でた。
そして、頬にキスをする。
「どんなに遅くなっても、必ず“ここに”戻るから・・・」
サクラの右手の指を一本ずつ開くと、手のひらに冷たい鉄の塊を乗せる。
「俺の部屋で待ってろ」
それは、リヴァイの部屋の鍵。
見上げると、切なそうな兵士長の瞳がそこにあった。
「はい・・・」
どうか、帰ってきてください。
調査兵団に・・・
「行ってくる」
モスグリーン色のマントが翻る。
「・・・行ってらっしゃい」
自分は待つことしかできない。
でも、それでここが貴方の“帰る場所”となるならば・・・
「ずっと待っていますから」
去って行く背中と黒髪を見つめながら呟くと、横から頭を抱きしめられた。
「・・・分隊長?」
「ありがとう、サクラ」
リヴァイが“帰りたい”と思えるような居場所を作ってくれて・・・
「・・・?」
サクラには、ハンジの礼の意味がわからなかった。
首を傾げているのを見て、分隊長はいつものように笑いながらワシワシと頭を撫で回す。
「安心して。何があってもリヴァイが刑罰を受けることはないようにする」
「お願いします」
「団長は論戦なら人類最強だし、リヴァイはまあ・・・私が粗相のないように見張るから」
粗暴で横柄な兵士長だけだったら話が拗れるかもしれないが、エルヴィンなら口八丁手八丁で相手を丸め込んでしまうだろう。
「だから、待っててあげてね」
リヴァイの部屋の鍵を握るサクラの手を包んだ。
「お願い」
とても優しい瞳でそう言われて、心が温かくなる。
「はい、分隊長」
ずっと待っています。
だからどうか・・・
リヴァイ兵長を守ってあげてください。
心から尊敬する上官に、深く頭を下げた。