【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第10章 Come To Me, My Love
「はあ・・・」
遠い・・・。
一度その腕に抱きしめられたからこそ、実際は自分と兵士長の間にどれほどの距離があるのか認識させられてしまう。
ペトラのように魅力と実力を兼ね備えた女性にならなければ。
サクラは馬小屋へ向かう道すがら、太陽が傾きかけた空を見上げた。
「今日は朝からすれ違ってばっかりだ・・・」
気分が沈んだ時は、シェリーに会いに行くのが一番。
顔を撫でていれば気持ちが安らぐからだ。
「リヴァイ兵長・・・」
ポツリとその名前がサクラの口から零れた、その刹那。
ものすごい力が右腕を引っ張り、体がよろめいた。
そして、塀と壁の間にある僅かな隙間に引き摺り込まれる。
「!!」
一瞬、何が起きたのかわからなかった。
体を抑えこまれ、身動きもとれない。
それでも恐怖心が湧き上がってこなかったのは、その香りに覚えがあったからだった。
「・・・やっと掴まえたぞ」
ああ・・・この声。
一瞬にして、胸が締め付けられるほど幸せな気持ちになる。
「おい・・・顔を見せろ」
壁を背中にしてサクラを抱きしめるリヴァイ。
太陽の光があまり届かないので薄暗いが、愛しいその顔ははっきりと見えた。
「リヴァイ兵長」
ようやく頭が、状況に追いついてくる。
強張っていたサクラの表情に笑みが戻った。
するとリヴァイの目も優しくなる。
「いきなり引っ張って悪かった」
「いえ、だいじょうぶです」
首を横に降ると、頬をそっと撫でられた。
「でも、どうしてこんなところに?」
ようやく大人二人が向かい合わせになれる程度の隙間だ。
リヴァイの胸にサクラの心臓の鼓動が直接届いてしまいそうなほど、密着している。
きっとリヴァイも体勢的に窮屈だろう。
「ここならそう簡単に離れられねぇだろうが」
「離れる?」
私が?
リヴァイ兵長から?