【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第10章 Come To Me, My Love
「エルヴィン、そういやお前・・・サクラを切り札にするとか言っていたが・・・」
「それにしても、この紅茶は美味いな」
リヴァイの言葉を遮るようにして、エルヴィンはティーカップを指差した。
これは先ほど、ペトラが持ってきてくれたものだった。
「初めてペトラが淹れた紅茶を飲んだが、良い味だな」
「ああ」
当たり前のように飲んでいるリヴァイに、エルヴィンは首を傾げた。
「ペトラはお前がここに来ているから、俺の分まで淹れて持ってきたのか?」
「そうかもな」
「・・・まさかお前、いつもペトラにお茶を淹れてもらっているのか?」
「だいたいは昼飯と夕飯の後だ」
「・・・・・・・・・・・・」
それで合点がいった。
いきなりティーセットを持ったペトラが現れた時は少々驚いたが、そういうことだったのか。
「リヴァイ・・・お前は、なんというか・・・」
「あ?」
まあ、気づいていないのなら仕方がないが。
意外と鈍感な一面もあるんだな。
それとも気づかないフリをしているのか・・・?
場合によっては、ペトラが切り札になる可能性もあるのか。
「何をほくそ笑んでいやがる・・・気持ちの悪い奴め」
「いや、すまない」
エルヴィンは咳払いをすると、リヴァイに書類を突き出した。
それを見るや、一瞬で不機嫌そうな顔に戻る。
「お前も目を通しておけ、リヴァイ」
「俺はいい。お前が書いたものだから、確認する必要はない」
「何を言っている。お前に関しての報告書なんだぞ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
その内容次第では、更迭される可能性もある。
だが、リヴァイは自分についてそこに何が書かれているのか、頑なに確認しようとはしなかった。
「俺に不利な事が書かれていたとしても、それもお前の判断ならば言うことはない」
「リヴァイ・・・」
リヴァイはカップに残った最後の一雫を啜った。
「お前には我儘を飲んでもらった“借り”があるからな」
そう呟き、冷たい三白眼をエルヴィンに向ける。
だからたとえ、どのような結果になったとしても・・・
後悔は無い。
エルヴィンはカップを置いて、リヴァイを見つめた。
その手の中で、女兵士の切ない想いがこもった紅茶が揺れていた。