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【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati

第10章 Come To Me, My Love





「今日は一段と機嫌が悪そうだな、リヴァイ」

団長の執務室で紅茶を飲んでいると、エルヴィンが困ったような目を向けてきた。

「当たり前だ。これから中央に行くってのに、誰が楽しそうにいられる」

吐き捨てるように答えたリヴァイに、団長は含み笑いをして見せる。

「本当にそれだけか?」
「あ?」
「例の遠征から帰ってきてからというもの、ブルームと一緒にいる姿を見かけないが」
「・・・遠征に行く前も、別段一緒にいたわけじゃねぇ」
ティーカップを鷲掴みにして飲む、お行儀もクソもあったものではない兵士長は、忌々しげに顔をしかめた。
「だが、一度手に入れてしまうと、離れているのがつらいだろう」
「・・・・・・・・・・・・」
リヴァイはカップを口元から離すと、エルヴィンをマジマジと見た。


「お前・・・まるで人を好きになったことがあるみたいな言い草じゃねぇか」

「昔、酒場の女に惚れたことがある」


過去を懐かしんでいるのか、それともまだ“過去”にはなっていないのか。
青い瞳が儚げに揺れた。

リヴァイはそれをしばらく見ていたが、再び紅茶を喉に流し込む。


「お前から人間じみた言葉が聞けて、安心したぜ」


冗談なのか本気なのか分からないが、リヴァイの言葉にエルヴィンは笑った。

一度手に入れた女性を捨てて、子供のころからの妄想を追いかけることを選んだことに悔いはない。
彼女は今、旧友の妻として幸せに暮らしている。

リヴァイ。
お前の結末はどうなるのだろうな。


「落ち着いたら、いくらでもブルームとの時間が取れるようになる」
「お前さえ邪魔しなければな」

サクラの命は、エルヴィンの意のままだ。
この男から「死ね」と言われたら、サクラは疑問に思う前にそうするだろう。

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