【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第3章 Seize the Light
壁外調査の前日。
調査兵団の兵舎は異様な雰囲気に包まれていた。
外泊して大切な人と最後になるかもしれない夜を過ごす者、
家族に手紙を書く者、
静かに酒を飲む者、さまざまだ。
明日、高い確率で死ぬかもしれない。
家族がいないサクラには向かう場所があった。
そこは、ウォール・ローゼ南端に位置する訓練兵団。
ほんの数カ月前までお世話になっていた場所だ。
特別にシェリーに乗ることを許されたので、数時間でここまで来ることができた。
しかし、滞在できるのはわずか。
またすぐに戻らなければ。
「あれ?サクラ?!」
丁度、食堂から出てきたアルミンがサクラに気がついて、目を大きくした。
「アルミン!」
「わー!ちょっと待って、今、エレンとミカサも呼んでくる!」
アルミンが言い終わらないうちに、口の中にパンを詰め込んだままのエレンと、ミカサが中から飛び出してきた。
「サクラ?!どうしたんだよ、いったい!」
「エレン、ちょっと見ないうちに背が伸びたんじゃない?ミカサも可愛くなったね」
エレンは得意げに笑い、ミカサは恥ずかしそうにうつむいた。
自分と同じ、シガンシナ区に住んでいた3人。
同じように両親を亡くし、そして兵士になることを目指している。
訓練兵3年目の時に入ってきたエレン達を見た時、懐かしくて思わず涙が出た。
巨人が襲ってきたあの日、同じ船でウォール・ローゼへと逃げた。
まだ幼い3人が身を寄せ合うようにしているのを見て、弟を死なせてしまった罪悪感もあり、弟を喜ばせるためポケットにいつも入れていたお菓子を分けてあげた。
そして、サクラが訓練兵に、エレン達が生産者になるまでの僅かな時間を共にしていた。