【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第9章 The Winds Blow For You ※
「なあ、サクラ・・・いつもみたいにあの歌を聴かせてよ。あ、でもミカサには内緒でな」
サァッと風が吹き、緑葉樹の葉が揺れる。
その下で、ほとんど背の変わらない少年と少女。
純粋で、無垢で・・・ハンジが嫌という程見てきたこの残酷な世界とは不釣り合いなほどだった。
「おいで」
すると少年は嬉しそうにサクラの背中に手を回した。
そしてサクラも彼の頭をそっと抱き寄せると、子守唄を口ずさむ。
ラベンダーの美しい青
ラベンダーの瑞々しい緑
あなたが王様なら
わたしは女王になりましょう
誰がそう言ったの?
誰がそう決めたの?
それはわたしの心よ、美しい人
わたしの心がそう決めたの
ラベンダーの美しい青
ラベンダーの瑞々しい緑
あなたが王様なら
わたしは女王になりましょう
それはハンジもモブリットも聴いたことのない歌だった。
寂しげだが、美しい景色を連想させるような音色。
また、その歌声はとても透き通っていて心に直接響いてくる。
歌い終わると、最後にサクラは少年の頬にキスをした。
眠りにつく幼子に母親がするように・・・
「オレ、この歌が好きだよ。気持ちがあったかくなる」
無邪気に笑う少年。
「この前、ミカサが歌ったけどなんか違うんだ。やっぱサクラが歌うのが一番好きだ」
サクラは、自分よりわずかに背が低い彼の頭を優しく撫でた。
「いい子でいてね。私はいつも貴方の味方だから」
「・・・うん」
そっと目を閉じ、サクラと同じようにフワリと微笑む少年。
なんて優しい光景なんだろう。
初夏の風で揺れる緑葉が、太陽を受けてキラキラと輝いている。
あの優しい子なら・・・
あの優しい手なら・・・
あの少年のように、闇に閉ざされた彼も笑顔を取り戻すことができるかもしれない。