【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第9章 The Winds Blow For You ※
面談が一通り終わり、キースとも別れて訓練兵団を後にする時だった。
馬小屋へ向かう道すがら、ハンジとモブリットは一人の訓練兵とすれ違った。
茶色の髪に緑色の瞳が印象的な、顔立ちの整った少年。
年の頃は12だろうか・・・頬が真っ赤に膨れ上がり、鼻からは血を流している。
そして大きな吊り目をさらに吊り上げていた。
すると、少年の行く先から、少女の驚いた声が聞こえてくる。
「どうしたの、そのケガは?」
その声に、ハンジは振り返った。
それは紛れもなく、サクラ・ブルームの声。
「また、ジャンとケンカをしたの?」
「だってあいつ、ムカつくんだよ。何かとオレに突っかかってくるしさ」
ボタボタと鼻血を流しながら悔しそうに顔を歪める少年を、サクラは優しく撫でた。
「ほら、これで鼻を抑えて」
ポケットからハンカチを取り出して渡す。
「そんなにケンカばっかりしていたら、ミカサが心配するよ」
「ミカサが心配性すぎるんだよ。最近はしつこいくらいだ」
「私も心配だよ」
すると、少年の吊り上がっていた瞳が、ふと幼さを取り戻した。
「サクラも・・・心配なのか?」
「うん。兵士は仲間との連携が大事なんだよ、なのに貴方が友達と仲良くできないと心配」
「・・・・・・ジャンは友達じゃねぇよ。それに、あいつは憲兵団に行きたがっているから仲間になることもない」
でも・・・、と少年はサクラの裾を握った。
「・・・サクラが心配するなら、もうケンカはしない」
「その言葉、もう何度も聞いたよ?」
「約束する。サクラが悲しい顔するなら、もうケンカしない」
「本当? なら嬉しいな」
フワリと微笑むその顔は、とても温かくて優しい。
気難しそうな少年だが、そんなサクラには無邪気で甘え切った顔を見せた。