【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第9章 The Winds Blow For You ※
「では・・・巨人が憎くはないのか?」
かつて調査兵団の団長を務めていたほどの男は、訓練兵の前に冷静を装うことで精一杯だった。
「・・・なぜ、巨人を憎まなければならないのですか?」
ハンジの心臓がドクンと脈打った。
「私達に捕食される家畜は、植物や野菜は、人間を憎んでいるのでしょうか」
人間が彼らと違うのは、知性があるということ。
“自由”というものを知っているから、“解放”されたいと願う。
ならば、自分達が戦う理由は巨人への憎しみではなく、 願望ではないか。
その願望が無くなった時、人間達は家畜へと成り下がる。
憎しみは、“巨人の脅威からの解放”が不可能だと悟った時に生まれるものではないのか。
ポツリポツリと語られたサクラの言葉に、ハンジは目の奥が熱くなった。
今までモヤモヤと頭の中で巡っていたさまざまな考えが、この言葉でハッキリとする。
そうだ。
私も戦う理由は、憎しみじゃない。
巨人を駆逐することではなく・・・
人類を“解放”してあげたいんだ。
「サクラ・ブルーム・・・」
無意識のうちにその名前を呟いたハンジ。
「分隊長・・・」
モブリットは分隊長に気づかれないよう、その横顔を静かに見つめていた。