【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第9章 The Winds Blow For You ※
「人を変える、ということはどういうことだ?」
「壁外で生きる術を見つける。その力をつける。今の人類は、獣以下ですから」
サクラはとても優しい顔をしていた。
しかし、自分も含めた人間の価値を“獣以下”だと表現する。
「鳥のように翼があれば、巨人の脅威に怯える必要などないでしょう。また、ドブネズミのように細菌に塗れた食物を食べることができるのなら、巨人の手の届かない地下のドブの中で生きていくことができるでしょう」
「ほう・・・」
「でも、私達はそれができないくせに、生きることへの執着はどの生き物よりも強い・・・」
何か思うところがあるのか、初めてサクラの瞳が揺れた。
しかしすぐに顔を上げる。
「鳥のように身を守る術を、ドブネズミのようにしぶとく生きる術を、自分は探したいのです」
“翼”と“自由”、が欲しい。
サクラは調査兵団の制服を着る、ハンジとモブリットを見上げた。
胸元には、その二つを象徴するエンブレム。
「巨人を絶滅させたいという動機ではないのだな?」
「食物連鎖の結果、私達が生きているように・・・きっと巨人が存在することにも何か意味があると思うんです」
「・・・ほう。あまりない意見だな」
「私達が彼らにとって捕食対象であるのは悲しいけれど・・・でも、それは私達が日々口にする植物や家畜だって同じこと」
ただ、自分達には意思がある。
自由を求める心がある。
だから、立ち向かわなければ。