【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第9章 The Winds Blow For You ※
面接といっても、質問の内容は志望する兵団組織と、その理由を主に聞くだけ。
1人につき、10分程度で終わるものだった。
「フワァ・・・」
「分隊長、あくびあくび!」
広い講義室の隅で面談の様子を見ていたが、さすがに20人目ともなると飽きてしまう。
おまけに昨晩は遅くまで巨人捕獲のための道具を開発していたから、かなりの眠気が襲ってきた。
しかし、それは次に入ってきた訓練兵を見た瞬間に吹き飛ぶことになる。
「サクラ・ブルーム」
キースがその名を呼ぶ。
どれどれ、とハンジは頬杖をつきながら入ってくる訓練兵の顔を見た。
「失礼します」
彼女は、ドアを開けた瞬間から違っていた。
キースに向かって敬礼をする姿、それは他の訓練兵と変わらない。
しかし、身にまとっている空気が違った。
「モブリット・・・あの子の名前、なんていったっけ?」
「確か・・・サクラ・ブルームとか」
「へえ・・・そう」
ハンジのメガネがキラリと光る。
講壇でキースと向き合っているサクラは、部屋の隅にいるハンジとモブリットにも気がついて頭を下げた。
「ブルーム、お前はどこを志願する?」
「私は調査兵団への入団を希望しております」
その返答は、なんとなく予想がついていたものだった。
サクラが身にまとっている空気は、とても優しくて温かい。
しかし同時に、張りつめた儚さを感じる。
これは、覚悟を決めている者だけが持つものだ。
「なぜ、ブルームは調査兵団を志望する?」
サクラは少しの間も置かず、キースを真っ直ぐと見ながら答えた。
「駐屯兵になっても、何も変えることができないと思ったからです。憲兵には興味がありません」
「何を変えたいというのだ?」
「人、です」
その瞬間、ハンジの脳裏に友人の姿が浮かんだ。
圧倒的な強さを持ちながら、自分を呪い、運命を呪い、世界を呪いながら生きているリヴァイ。
すべてを暗闇の中へ葬り去るためだけに、性行為に及んでいた。
彼は今、憎しみと怒りしかしかない。
この子が彼を変えることができるかもしれないと思うのは、突飛すぎるか・・・