【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第9章 The Winds Blow For You ※
「じゃあ、そろそろ行こうか」
ハンジが裸のままの娼婦に毛布をかけてあげた時だった。
気絶していると思っていた彼女が突然、起き上がる。
「待ってください、リヴァイ様! 今日こそ私を殺して下さると仰ったではないですか!」
「・・・・・・・・・・・・」
派手な化粧などなくても美しい女なのだろう。
しかし整った顔を歪めながら、リヴァイにすがるような瞳を向けた。
「男を悦ばすためだけに生まれた私の人生を終わらせてくれると・・・仰ったではないですか」
その時、ハンジの脳裏に店の前でうずくまっていた少女の姿が浮かぶ。
娼婦が産み落とした娘は、娼婦として生きるしかない。
「・・・甘えるな」
そう言ったのはハンジだった。
「君が死にたいと思うのは勝手だ。だがな、私達はそんな君の未来も守るため、毎日命をかけている」
「・・・・・・でも、もう一日だって長く生きていたくない」
「だったら、今すぐにでも実行したらどうだ? 死ぬ方法はいくらでもある。たとえば、調査兵団に入るとかな」
すると、それまで虚ろだった目に光が差した。
ハンジはそんな娼婦を優しく見つめる。
「男に快楽を与える生業を呪うなら、男に組み敷かれたまま死ぬな。それくらいのプライドは持ちなさい」
「・・・・・・・・・・・・」
「調査兵団に入れば、壁外調査のたびに死ぬチャンスはいくらでもあるぞ! しかも、人類のための名誉ある戦死という、立派な肩書きつきでね」
「私のような者が入ってもいいのですか?」
「少なくとも私は、来てくれたら嬉しいな」
娼婦は強いショックを受けたような顔でハンジを見た。
今まで誰かから、こんな風な言葉をかけてもらったことなどなかった。