【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第9章 The Winds Blow For You ※
ポツ・・・ポツ・・・と数粒の雨が落ちてきたと思ったら、次の瞬間土砂降りとなる。
「あーあ、ついに降ってきちゃったね」
ハンジは雨具のフードを被った。
これ以上進むことはできない。
陣形の最前列にいたエルヴィンは、撤退の合図を送った。
予定していた行路の3分の2は来ることができた。
これならば作戦失敗とは言わないだろう。
「ほとんど陣形が崩れなくて良かったね」
隣のハンジがメガネについた雨雫を拭いながら言った。
「ああ・・・そうだな」
しかし、妙な胸騒ぎがする。
すると伝達係が血相を変えながら、エルヴィンのもとへとやってきた。
「お伝えします! 巨人20数体との遭遇により、最後列が壊滅したもようです」
「なんだって?!」
ハンジが驚きのあまり、叫んだ。
「それで、被害の範囲は?」
落ち着き払っているエルヴィンが、状況を説明するように促す。
「それが、被害はリヴァイ班だけにとどまったようで・・・陣形も崩されることはありませんでした」
「え、だって20体以上いたんでしょ・・・? リヴァイ達だけで対処したというの・・・?」
ハンジは信じられないといった様子で、伝達係を見つめた。
「伝達では、そのように聞いております」
「そうか・・・ご苦労だった、班に戻っていいよ」
冷静にしていたエルヴィンだったが、伝達係が去ったのを確認してから眉をひそめた。
後列の信煙弾は、なかなか前に伝わりにくい。
これは以前から懸念されていたことだ。
まして、今日のように天候が悪い日はもっと警戒すべきだった。
「リヴァイの班が壊滅だって・・・? まさか、死んでないよね」
「その可能性は低いと思うが・・・」
エルヴィンは一瞬だけ言葉を詰まらせたが、表情にはほとんど変化が無い。
いつものように思慮深い瞳は、あらゆる感情を覆い隠している。
「もしリヴァイが殉死したら、調査兵団としては痛手となるな」
まるで他人事のような物言いに、ハンジは背筋に冷たいものを感じずにはいられなかった。