【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第9章 The Winds Blow For You ※
逃げだす者もいると思っていたリヴァイの瞳が、驚きのため大きく開く。
「・・・そうか・・・・・・」
もう今にも雨が落ちてきそうだ。
そうなれば立体機動を使っての戦いは絶望的になる。
だがその時はエルヴィンが即座に作戦中止を決断するだろう。
最後尾の状況を知って援護を送ってくれる、それまではなんとか持ちこたえる。
「お前ら、犬死だけはするなよ」
リヴァイはそれだけ言うと、馬上からワイヤーを飛ばして一番大きい巨人の腰に突き刺した。
体を高速回転させながら、下肢の筋肉を素早く削いでいく。
たまらずに巨人が倒れたところで、急所を突いて殺した。
その間、わずか10秒。
一息つく事もなく2体目、3体目と倒していく。
そして、4体目へと体勢を変えた瞬間、リヴァイの目に悲惨な光景が飛び込んできた。
「ぎゃあああ!!」
部下の悲鳴が耳をつんざく。
巨人の口から人間の足がはみ出ていた。
バキッバキッと骨が砕ける音。
血と臓物の匂いが充満した。
「よくも・・・よくも!!」
仲間を殺されたリヴァイ班の兵士が地面を走り、巨人の足に切りかかった。
「よせ!」
その兵士は頭に血がのぼって状況が見えていなかった。
地面から接近しすぎると巨人の動きを予測できなくなる上、立体機動のアンカーを刺し難くなる。
「間合いを取れ、馬鹿野郎!」
しかし、リヴァイの声は届くことなく、彼は巨人に掴み上げられるとそのまま上半身だけ胃袋に押し込まれていった。
「・・・・・・・・・」
一瞬にして二人の部下を失ったリヴァイの瞳は、空洞のように瞳孔から光が消えていく。
ドクンと心臓が大きく脈打った。
怒り。
狂気。
そして、闇。
リヴァイをゆっくりと飲み込んでいく。
「へ・・・兵長・・・?」
ただならぬ空気に、金髪の兵士がおずおずと声をかけてきた。
「お前ら・・・巻き添え喰らいたくねぇなら、離れていろ」
それだけ言うのが、やっとだった。
全身の筋肉が隆起する。
・・・殺す。
次の瞬間、リヴァイは黒い疾風となり、辺りは瞬く間に巨人の血飛沫と肉片で赤く染まっていった。