【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第9章 The Winds Blow For You ※
エルヴィンはすぐにリヴァイ班の配置場所に集まるよう、信煙弾で合図を送った。
自分達がいた所からそこまでは、馬で5分ほどの距離だった。
もし、リヴァイ達の信煙弾に気づいていれば、援護を送って壊滅状態を避けることができたかもしれない。
「リヴァイ・・・」
まだ巨人の死骸から出る蒸気が立ち込めるその場所に辿り着いた、エルヴィンとハンジが見たもの。
「・・・やっと来やがったか、エルヴィン」
それは真っ赤な血の海に佇む、氷のように冷たい目をしたリヴァイだった。
「俺の部下は三人死んだぞ・・・」
残り一人も重傷で、今は救護班の手当てを受けている。
これだけの被害を受けても、巨人は1体も陣形の中に入れなかった。
「そうか・・・」
エルヴィンは無言で、殉死した兵士のものと“思われる”肉塊を見つめる。
リヴァイはそんな団長に、熱のない瞳を向けた。
「・・・陣形は無事だったんだな?」
「ああ」
「それで、お前は納得できるまで進むことができたんだな?」
「ああ、そうだ」
エルヴィンから目を逸らし、ほんの一瞬だけ苦しげに顔を歪める。
「・・・ならいい」
自分の部下は犬死では無かった。
それだけ知れればいい。
それ以上は何も語らず、エルヴィンを責めることもしないリヴァイ。
ハンジはその姿を見て、無性に恐ろしくなった。
そして・・・
無性に悲しくなった。
その遠征からの帰還後。
ハンジはリヴァイを見て胸をよぎった恐怖、そして悲しみの実態を目の当たりにすることとなる。