【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第9章 The Winds Blow For You ※
進行方向を告げる煙弾を見て、リヴァイは眉をひそめた。
エルヴィンの野郎、まだ進む気か。
最後列にいる彼の視界には、背後からやってくる20体以上の巨人。
巨人発見の合図はすでに送ってある。
なのにまったく考慮されていない。
後列の信煙弾は気がつきにくく、前の方へ情報が伝わらない。
それが当時の索敵陣形の弱点だった。
「リヴァイ兵長!ダメです、陣形を保てません!」
「か、確認できるだけで巨人の数は25体! うち、2体が奇行種のようです!」
リヴァイ班の部下達が叫んだ。
いずれも討伐数20体以上を誇る精鋭だが、見たこともない数の巨人を前に恐怖で顔がひきつっている。
「・・・・・・・・・」
リヴァイは空を見上げた。
雲が厚い。
それに向い風が強すぎる。
もう一度煙弾を撃っても風で流れてしまうだろうし、進路を決めるエルヴィンに伝わるまで、ここがもつかわからない。
右翼側と左翼側にそれぞれ人員を派遣し、状況を伝達すべきか?
だったら、前へも送らないといけないだろう。
となると、二人でこの数を相手にしなければならない。
不可能。
ここでくい止めるしかない。
立体機動には向かない平地だが、陣形が崩れれば全滅もあり得る。
エルヴィンが作戦続行と判断した以上、どのような状況であっても守らねば。
「お前ら・・・」
先頭を走る巨人が接近してくる。
人間を喰おうと、だらしなく口を開けながら。
「逃げてぇ奴は、今すぐ逃げろ」
リヴァイは自分の班に向かって言った。
「でも兵長は?!」
「エルヴィンから陣形の最後尾を任された以上、ここを突破されるわけにはいかねぇ」
だから、自分は残らなくてはならない。
「でも、もし・・・お前らの中に、俺と同じ覚悟を決められる奴がいるなら・・・」
リヴァイは剣を抜き、自分が指名した四人を一人ずつ見た。
「雨が降る前に、あの巨人どもを片付けるぞ」
すると、誰かがゴクリと喉を鳴らした。
精鋭だとはいえ、死の恐怖がないわけではない。
それでも自分達を選んでくれた人は、陣形を守ろうとしている。
それに応えなくてどうする。
「・・・俺たちもやります! リヴァイ兵長!」
四人全員が剣を抜いた。