【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第8章 Beneath A Gentle Shower ※
「そんなに大事な花なんだね?」
「別に・・・資料で見る限りは薬草じゃねぇし、消臭効果もあるわけじゃない。まして、食料にもならない、ただの植物だ」
「じゃあ、何故?」
リヴァイは少し黙った。
何故? と改めて聞かれると、自分でも明確な答えは見当たらなかった。
何の役にも立たない花を見に行ってどうする?
そこへ辿り着く前にサクラが傷つくかもしれない・・・
それでも・・・
「サクラの大切な記憶がそこにあるらしい」
「サクラの・・・?」
リヴァイの瞳に陰が落ちる。
「俺も見てみたい、それだけだ」
「リヴァイ・・・」
「な、本当に単純な俺の我儘だ。それなのにエルド達を巻き込もうとしている」
不安を隠すためか、はたまた自分の気持ちを明かしたことへの照れ隠しか、左腕の錘も外すと何の前触れもなく投げて寄越す。
さすがに二つ目はズシリと重く感じた。
それでもハンジは優しくリヴァイを見つめる。
「リヴァイ・・・なんか変わったな」
「・・・あ?」
相変わらず、無愛想で無表情。
感情の表現といったら、ただ眉をひそめるか、目尻を釣り上げるかするだけ。
口調に至っては抑揚が無く、皮肉や嫌味ばかり。
そんなリヴァイが、随分と穏やかな表情をするようになった。
少なくとも、ハンジはそう思う。
特にサクラの名前が出ると、途端に空気が温かくなる。
やっぱり、二人を引き合わせて良かった。
彼女ならきっとリヴァイを救えると思った。
でも・・・
もしどちらか、もしくは二人とも死んだら意味が無い。
そんな悲しい運命を辿らせたくはない。
「ハンジ・・・何を考えてやがる」
いつもとは違う空気を読み取り、リヴァイがハンジの目を真っ直ぐと見つめてきた。