【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第8章 Beneath A Gentle Shower ※
おまけ 〜その3〜
(おまけ 〜その2〜 の後の話です)
夜、リヴァイがいつものように鍛錬場で汗を流していると、背後でドアが開く音がした。
またオルオか・・・?
ため息を吐いて振り返ったリヴァイの瞳が、大きく開く。
そこに立っていたのは意外な人物だった。
「こんちわ!」
「・・・何しに来た・・・?」
無造作にまとめたボサボサの髪。
使い古したメガネの奥にある、風貌からはアンバランスとさえ思えるほどの知的な瞳。
「ハンジ・・・」
「そんなに怖い顔しないで欲しいなぁ」
「どうせ、明日の遠征を中止するように説得しにきたんだろ。出てけ」
警戒しているリヴァイに対し、ハンジはあくまで明るい表情を崩さない。
「もし、エルドの演説が無ければそうしていたかもしれないね」
「・・・・・・・・・」
「でも・・・もう反対はしないよ」
ハンジは、上半身に薄っすらと汗をかいているリヴァイを見て、肩をすくめる。
「・・・どういう風の吹きまわしだ?」
「反省してるんだ」
メガネの向こうにある瞳が、儚げに揺れた。
「一応、リヴァイとの付き合いはエルドよりも長いつもりだけどさ、彼の方がよっぽどリヴァイを理解しているなって思ったよ」
「・・・ああ。あいつには申し訳ないと思ってる」
余計な心配をかけてしまった上に、見送りまでさせてしまうんだから・・・
するとハンジは大げさに“あ〜あ”と言ってみせた。
「ほんと! どう考えたって花を見物するためだけに壁外へ行くなんて、正気の沙汰じゃないよ」
「・・・お前に正気がどうのって言われちゃおしまいだな」
リヴァイは右腕につけていた10キロの錘を外すと、ハンジに向かって放り投げた。
「失礼な物言いだね」
ハンジはそれを片手で軽々とキャッチする。
「花だったらここにもたくさんあるじゃない。それじゃだめなの?」
「・・・そこにしか咲かねぇ特別な花なんだよ。面倒臭いことにな」
リヴァイだって随分と調べた。
できることならサクラを危険な目に遭わせたくない。
でも、非情にもウォール・マリア北東部にしか咲いていないとの結論に至った。