【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第8章 Beneath A Gentle Shower ※
翌朝、サクラが目を覚ますとリヴァイはすでに身支度を済ませていた。
「起きたか」
見ると、太陽がほんの少し顔を覗かせている。
個体によっては、もう活動し始めている巨人もいるだろう。
サクラは慌てて服を整え、立体機動装置のベルトを付ける。
全ての準備が整うころには、空が白んでいた。
「兵長」
もういつでも出発できます。
そう伝えようとして、桜の木を見上げているリヴァイを見た瞬間だった。
ピンク色の風に、小柄なその体が吸い込まれてしまうのではないか。
そんな錯覚を覚える。
「・・・どうした?」
思わずマントの裾を掴んだサクラを、リヴァイは優しい目で見つめた。
「いえ・・・なんか一瞬・・・」
この桜が咲く光景は、死んだ家族を思い起こす。
そのせいか・・・
一瞬、貴方が消えてしまいそうに思えた。
「・・・最後にもう一度、目に焼き付けておこうと思ってな」
リヴァイの瞳が、儚く揺れる。
「綺麗な・・・色だな」
一枚の花弁が、兵士長の頬を撫でた。
「なあ、サクラ。この桜にも花言葉はあるのか?」
「はい」
美しく、薄命なこの花が持つ言葉は・・・
「純潔、です」
すると、それを聞いたリヴァイは少し微妙な顔でサクラを見た。
「・・・純潔?」
「はい」
「・・・その花の下で、ゆうべ俺はお前を抱いてしまったのか」
なんか罰が当たりそうだな・・・と顔をしかめたのを見て、サクラは笑った。
「いいんですよ。兵長は私にこの桜の木を見せてくれました」
リヴァイの首に腕を回す。
「そのせめてものお礼として、私は純潔を貴方に捧げたんです」
だから、きっと桜も許してくれますよ。
リヴァイの腕もサクラの腰に回った。
「ああ・・・だといいな」
桜の木の下で口付けを交わす。
いつかまた見に来よう。
この美しい景色を、悲しい記憶の中の光景にしないよう・・・
二人で、必ず・・・
そう誓い合った。