【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第8章 Beneath A Gentle Shower ※
ヒラ・・・
ヒラ・・・ヒラ・・・・・・
何かが優しく肌を撫でる。
いつの間にか眠っていたリヴァイがゆっくりと目を開けると、薄桃色の花弁が何枚も顔に降ってきていた。
「ん・・・」
目を凝らしてよく見ると、花弁の向こうに白い手が見える。
ああ、そうか。
この花弁は散っているのではない。
誰かが上から落としているんだ。
頬をなぞって落ちていく桜が、優しいシャワーのようだ・・・
「サクラ・・・」
名前を呼ぶとヒラヒラと舞う花弁が止まった。
そして柔らかな笑顔が、リヴァイの目に飛び込んでくる。
「お目覚めですか?」
「ああ・・・夢を見てた。というか、昨日のことを思い出していただけだが」
リヴァイは立体機動装置を外し、地面に敷いたマントの上で仰向けになっていた。
ボーッとしたまま見上げると、桜の木の枝にたくさんのランプが下げられている。
花の向こうに見える夜空には、数え切れないほどの星がまたたいていた。
「あのランプはお前がかけたのか?」
「はい。夜でも見えるように」
ここに到着してから夜を迎えるまでは、余計な巨人との遭遇を避けるために木の上で時間を潰した。
二人で見たウォール・マリアの地に太陽が沈む光景は、リヴァイの記憶のどれにも勝る美しさだった。
再び、薄桃色の花弁が舞い落ちる。
一枚がリヴァイの睫毛に絡まった。
「・・・何してる」
「地面に落ちた花弁を集めて、兵長にイタズラを」
本当に兵士なのかと疑ってしまうような、純粋で無邪気な笑顔。
「兵長のお顔が桜色です」
リヴァイは愛しそうに目を細めた。
「・・・ここに来い」
枕元で膝をついていたサクラの手を引くと、持っていた花弁がすべて舞い散った。
「一緒に横になってもよろしいのですか?」
「当然だ」
右腕を伸ばして、サクラの体を抱き寄せる。
その頭を胸に乗せるよう促して、桜の花弁が数枚絡まっている髪を優しく撫でた。
「・・・重くないですか? 息が苦しいとか」
「いや。お前がつらいのならやめるが」
サクラは首を横に降ると、リヴァイの体に腕を回して微笑んだ。
幸せそうな顔を見ていると、ここへ連れて来ることができて・・・桜の花が咲いていて本当に良かったと思う。