【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第8章 Beneath A Gentle Shower ※
「サクラ」
「あ、はい!」
「ここから山に入る。疲れてねぇか?」
「だいじょうぶです」
長距離移動の疲れとは別に、心臓が高鳴っていた。
巨大樹の森にある木よりは背が低いが、ここにも大木がたくさんある。
登山道といっても傾斜はそれほどでもないので、馬に乗ったまま進むことができた。
「気を抜くなよ。立体機動を使えるといっても、いつ巨人が飛び出してくるかわからん」
サクラが頷いたと同時に、リヴァイが突然アンカーを木に刺した。
回転しながら宙に舞い上がり、5メートル先の木の陰にいた巨人に斬りかかる。
こちらの存在に気付くヒマも与えてもらえず、その巨人はすぐに息絶えた。
「な?」
剣をケースにしまいながら念を押すリヴァイに呆気にとられつつ、サクラはもう一度頷く。
やっぱり兵長は立体機動装置を使った時こそ本領発揮する・・・
あらためてそう思った。
道はだんだんと険しくなり、さすがに馬に乗ったまま移動はできなくなった。
周囲を気にしつつ、徒歩に切り替える。
もし巨人と遭遇してもすぐに木の上に逃げられるよう、操作装置に手をかけたままにした。
しかし、その緊張感とは別に胸の高鳴りは増すばかりだ。
「兵長・・・」
思わず、先を歩くリヴァイを呼ぶ。
「なんだ?」
「・・・いえ・・・なんでもありません」
自分でも把握できないこの気持ちをどう説明していいのかわからず、荒れた山道に目を落とした。
いったい、どうしたというのだ。
苦しい。
すると、サクラの手がふと温かいぬくもりに包まれた。
顔を上げると、リヴァイが手を握ってくれている。
「もう少しのはずだ。しっかりしろ」
「すいません」
手を引かれながら、登り続ける。
シェリーも時折、“頑張って!”と言いたげに鼻を鳴らした。