【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第8章 Beneath A Gentle Shower ※
743年、人類は巨人から身を守るため壁の中で生きることを選択した。
それから105年という月日が流れたが、たった二人という少数で壁外を遠征した人間は果たしていただろうか。
辺りは広い草原で、ところどころに草陰から白い花が顔をのぞかせている。
とても綺麗な景色だと思った。
「エレンとアルミン、きっと羨ましがるだろうな」
壁の向こうの世界に興味を示していた二人。
今ごろはきっと兵士になるために訓練をしているだろう。
この景色を二人やミカサにも見せてあげたい。
そう思った直後、ここがたった3年前までは人類の活動領域だったことを思い出す。
本当の“壁外”は、ウォール・マリアの向こう側にあるんだ。
・・・遠い。
こんなに恐怖で心臓を脈打たせながら馬を走らせても、人類がいつそこに辿りつけるかわからない。
旧市街地を出てから、リヴァイはしばしば地図と方位磁石で位置を確認していた。
何度か目的地の正確な場所を尋ねたが、なぜか何も教えてくれない。
あとどれくらいだろう。
そう思った瞬間だった。
ドン・・・ドン・・・
大きな足音が背後から近づいているのが聞こえる。
振り向くと、巨人がこちらに向かって走ってくるのが見えた。
「兵長!巨人です!!」
サクラの叫び声にリヴァイも振り向き、それを確認する。
そして素早く左右に目配せをすると、右方向を指差した。
「お前はあっちの方角へ走れ。俺がヤツらを片付ける」
「“ヤツら”・・・?」
そう言われて気がついたが、後ろから追いかけてくる巨人以外に、左からもう1体が近づいてきている。
まさか、一人で両方を相手にするつもりなのか?
ましてここは平地だ。
私も一緒に戦います。
そうサクラが伝えるよりも先にリヴァイは馬から降り、首をぐるりと回して剣を抜いた。