【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第8章 Beneath A Gentle Shower ※
「じゃあ、先に下で待ってるぞ」
リヴァイはまるで椅子から飛び降りるように、簡単に壁から飛び降りる。
立体機動装置をうまく使って、羽のように軽やかに地面に降り立った。
その場はもう壁外だ。
「では、私も行ってきます」
するとハンジはサクラの手を掴んだ。
「サクラ、ひとつだけいいかな」
メガネの向こうから、深い瞳で見つめられる。
「サクラは知らないだろうけど、今回の壁外遠征を発案したのはリヴァイだ。私だけでなくエルヴィンも反対したけど、聞く耳を持たなかった」
「え・・・」
昨日のあの重苦しい空気・・・それが理由だったのか。
「リヴァイには私達の意見や忠告を無視しても、実行を急がなければならない理由があった」
「それはいったいなんですか?」
「そりゃ・・・聞いたら笑っちゃうくらい、取るに足らない理由だよ」
アハハと笑ってみせるが、ハンジは悲しそうな顔をしていた。
そして、サクラの手を握る。
「でも、貴方達にとってはきっと・・・命を懸けるに値するほどの理由なんだろうね」
サクラは困惑した。
昨日からずっとそうだ。
エルヴィンと話している時も、ハンジのこの言葉も、まったく理解できない。
今回は、地質と生態調査が目的のはず・・・
自分が命を懸けるほどの理由だとは思えない。
「ごめんね、いくらおしゃべりの私でもこれ以上は言えない」
「分隊長・・・?」
「でも、これだけはわかってね」
リヴァイがこの無謀とも言える遠征を強行したのは・・・
すべてはサクラ、貴方のためなんだよ。
「私の・・・ため?」
「そう。そして、もし無事に帰ってくることができたら、私がシェリーを貴方に渡したことが間違いではなかったということになる」
シェリーはサクラが調査兵団に入った時にハンジからもらった馬。
リヴァイの馬と双子だったのは偶然だと思っていたが、意図的だったのか・・・?