【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第8章 Beneath A Gentle Shower ※
「・・・なんだ、クソメガネ」
「あれ、ご機嫌ナナメだね。もしかしてお邪魔しちゃったかな?」
あっけらかんと笑うハンジに、リヴァイは苛立ちをさらに募らせたようだ。
サクラにしたように後頭部を掴むと、今度は左右に乱暴に振る。
「イタタタタ、ごめんって!」
「仕事をサボって、わざわざお見送りか? エルヴィンにまた叱られるぞ」
ハンジは苦笑いをしながら、リヴァイとサクラに巨人捕獲用のネットを突き出した。
「・・・なんだ、これは」
「あれれ、知っているはずだけどな。これは捕獲網・・・」
「そういうことじゃねぇ。これを俺らに渡してどうするんだと聞いてるんだ」
「そりゃ、せっかく壁外に行くんだから巨人を捕まえ・・・」
「却下」
ピシャリと言い放ったリヴァイに、ハンジは思いっきり残念そうな顔をする。
そんな二人のやりとりは、サクラにとって興味深いものだった。
普段、このような上官同士の会話を見る機会はあまりない。
兵長・・・なんだか楽しそうだな。
ハンジが人当たりの良い性格というだけではないだろう。
きっと、巨人に対する深い知識や探究心、そして兵士としての力を認めているのだ。
やっぱり、分隊長はすごい。
あのリヴァイ兵長と対等に渡り合えるのだから。
「まあ、いいわ。どのみち巨人を捕獲するには人数が少なすぎるし」
ハンジはネットを放り投げてサクラの方を向くと、心配そうな表情を見せた。
「サクラ、気をつけてね」
「はい、分隊長」
兵舎での仕事を抜け出してまで見送りに来てくれた。
なんて優しい上官なんだろう。
「リヴァイも・・・サクラのことよろしく頼んだよ」
「お前に言われるまでもねぇ」
無愛想に答えたリヴァイにハンジが微笑んだ時だった。
最後の荷物を乗せたリフトが下に到達したことを知らせる声が聞こえる。
「兵長」
リヴァイ班に所属するグンタが三人のもとへやってきた。
「準備が整いました。いつでも出発できます」
「そうか」
現在、特別作戦班に所属している兵士は四名。
その中でグンタはおとなしいが、リヴァイを絶対的に信頼している。
それでも今回の壁外調査には不安があるのか、顔を強張らせていた。