【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第8章 Beneath A Gentle Shower ※
1時間後、リヴァイは調査兵団団長の執務室にいた。
「・・・・・・・・・・・・」
手渡された計画書に目を通し終えたエルヴィンは、難しい顔でリヴァイを見上げる。
「正気なのか、リヴァイ」
「ああ」
信じられない、といった顔をしている。
「あらたまって何を言い出すかと思えば・・・お前は俺の首を飛ばす気か?」
「いつか殺してやろうとは思ってるが。でも今はまだ、その首を刎ねるつもりはねぇ」
「ふ・・・」
口元に笑みを浮かべるエルヴィンだったが、いつもの余裕さはない。
「添付された資料には、“極めて困難かつ、危険”だと書いてある。情報部の人間はこの作戦についてそう評価したんだぞ」
「壁の向こうへ一度も行ったことないくせに、脳みそだけやたらとデカイ豚どもはな」
「リヴァイ」
エルヴィンは諭すような目と声でリヴァイに語りかけた。
「このあまりに危険な作戦を、俺が許可するとでも思っているのか」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「何より、うちにはこれを実行するだけの余裕はない」
問答無用、といった空気が流れる。
絶対にリヴァイの提案を受け入れるつもりはなさそうだ。
「エルヴィン」
リヴァイは静かな声で言った。
「俺はお前に従って調査兵団に入ってから、一度も逆らったことは無かったはずだ」
「・・・そうでもなかったように記憶しているが」
「とにかくだ。俺は調査兵として少なからずお前の役には立っただろ」
「その見返りが欲しい、と? 話にならんぞ、リヴァイ」
珍しく、リヴァイを見るエルヴィンの目が厳しい。
「俺には調査兵団に所属する、全ての人間の命に責任がある」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「リヴァイ、お前の案は却下する」
「エルヴィン」
おそらく、二人が出会ってから初めてのことかもしれない。
「頼む。何か起これば、今回だけはお前じゃなく俺が責任を取る」
頭こそ下げていないものの、リヴァイがここまでエルヴィンに食い下がるのは。
エルヴィンの瞳に驚きの色が現れたが、それもほんの一瞬ですぐに険しい表情へと戻る。