【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第8章 Beneath A Gentle Shower ※
「・・・美味い」
「ほ、本当ですか?」
ペトラは嬉しそうに顔を輝かせる。
「お前、紅茶を淹れるのうまいな」
お世辞ではなく、本当にそう思った。
どんな葉を使っているのか知らないが、味わい深い。
「ありがとうございます! あの・・・これから毎日お茶を淹れて差し上げてもいいですか?」
「・・・ああ、こっちが頼みたいくらいだ」
美味かったから、褒めた。
これからも淹れてくれると言ったから、頼んだ。
それだけのことなのに、ペトラはとても幸せそうな表情をしていた。
そんな顔をされると、これから自分がやろうとしている事がとても残酷に思えてくる。
もしかしたら、アイツのこんな顔も奪ってしまうのではないか。
「ペトラ」
急にリヴァイに名を呼ばれ、頬を赤く染める。
「俺がもし、お前を命の危険に晒したらどうする」
「え・・・?」
ペトラは質問の意図がわからず、困惑した。
「例えばだ、俺がお前を丸腰にして巨人の前に放り出したら・・・お前は俺を憎むだろうな」
「・・・・・・・・・・・・」
二人の間に沈黙が流れる。
少しして、ペトラが口を開いた。
「いいえ、憎みません」
「ほう・・・」
「兵長のことを知っている人間なら、貴方が理由も無しにそんなことをする人ではないことをわかっていますから」
リヴァイの瞳が大きく開く。
「それじゃ答えになってませんか?」
微笑むペトラに、眩しくて愛しい彼女の姿が重なる。
「いや・・・」
我ながら情けないと思った。
これがもしエルヴィンに命じられたことならば、何も考えずに実行していただろう。
そのくせ、自分が立案したことには自信を持てず、および腰になるとは・・・
「感謝する」
ペトラ、お前のおかげで腹を括れた。
もう迷わねぇ。
何も打ち明けず、一人覚悟を決めたリヴァイの横顔を、ペトラは少し切なそうに見つめていた。