【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第8章 Beneath A Gentle Shower ※
それよりも、今は届いた資料を確認する方が大事だ。
封筒の中には、数枚の報告書と地図が入っている。
それらに目を走らせ、必要な情報を探す。
「・・・あった・・・・・・」
リヴァイはすぐに羽ペンを持つと、書類に何かを書き込んでいった。
あまりに真剣で、ペトラがそこにいることすら忘れてしまう。
「あの、兵長」
「なんだ」
「お茶でも淹れてきましょうか?」
茶など飲んでいるヒマはない。
余計なことをするな、と言いかけてやめた。
「・・・そうだな、頼む」
「はい!」
弾んだ声で返事をし、部屋を出て行ったペトラの後ろ姿にリヴァイは目を細めた。
そういえば、アイツと同じ年だったな。
兵士として高い評価を得ているし、ここ数回の壁外調査で見ていたが、確かに腕がたつ。
ペトラだったら・・・
リヴァイの表情が曇り、瞳が揺れる。
ペンを走らす手も止まった。
「・・・・・・・・・・・・」
“リヴァイ兵長”
ペトラよりも少しだけ落ち着いたその声を、
自分を見上げて微笑むその顔を、思い出す。
自分は今、取り返しのつかないことをしようとしているのではないか。
情報部から送られてきた資料には、赤いインクでこう書かれている。
“貴殿の発案は極めて困難かつ、危険だと思われる”
それでも、時間がない。
やるなら今しかねぇんだ。
「リヴァイ兵長?」
ペトラの声で我に返った。
顔を上げると、紅茶を持って立っている。
その良い香りに少しだけ気持ちが和らいだ。
「あの・・・あまり無理をなさらないでください」
ペトラはティーカップを机に置きながら、何枚も重ねられた書類に目を落とす。
作戦立案や研究調査はリヴァイの仕事ではないので、デスクワークをしているのが意外だったのだろう。
「・・・・・・・・・・・・」
紅茶に口を付けると、優しい味がした。