【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第8章 Beneath A Gentle Shower ※
日差しが暖かさを増した、ある日。
カリカリと羽ペンを走らせる音が、簡素な部屋に響いていた。
「ちっ・・・」
慣れない書き物にリヴァイは苛立ちを隠せず、舌打ちをしながら窓の外を見た。
丁度、二階にあるこの部屋と同じ高さの木に、膨らみかけた蕾みが見える。
しかし、リヴァイはそんな春の訪れを喜ぼうともせず、険しい顔で机の上の書類に向き直した。
ちくしょう・・・遅ぇな。
このままじゃ間に合わねぇぞ。
仕事がはかどらないのもそうだが、この苛立ちの原因は届くはずのものが届かないせいもあった。
焦りがようやく天に届いたのか、ドアをノックする音が耳に飛び込んでくる。
「入れ」
「失礼します」
中に入ってきたのはペトラだった。
その手には封書を持っており、リヴァイが待ち望んでいたものに間違いない。
「兵長、情報部から資料が届いてます」
「やっと来たか。情報部のヤツら、のんびりクソでもしてんのかと思ったぜ」
はやる気持ちを抑えながら封書を受け取る。
その時に手が軽く触れてしまい、ペトラはビクリと体を強張らせ、恥ずかしそうに俯いた。
「すまない」
「あ、いえ・・・」
気に障ったのかと思い謝ると、ペトラの顔は耳まで赤く染まっていた。
「・・・?」
「そ、その、初めてこの部屋に入ったので緊張してしまって」
兵士長という肩書きになってから、割り当てられたリヴァイ専用の部屋。
一応は執務室ということになっているが、デスクとソファーが置いてあるだけだ。
リヴァイ自身もここで仕事をすることは無く、もっぱらリヴァイ班の控え室となっている。
そのため、一般の調査兵にしてみれば珍しいのだろう。
「なんなら、くつろいでってもいいぞ」
中身を傷つけないよう慎重に封筒を爪で破りながら、こともなげに言った。
「え、い、いいんですか?」
「好きにしろ」
そのわりには、ソファーに座る様子もなくリヴァイの前に立ったままだ。
人が封を開けるさまを、そんなに見ていたいのか。
おかしな女だな。
リヴァイに対して上司以上の感情を抱いているペトラの気持ちに気づかず、首を傾げた。