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【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati

第7章 Lavender




「よく知ってるな」
「母は花が好きな人でしたから・・・」

家のいたるところに花瓶が置いてあり、季節ごとに違う花が生けられていた。
庭の花壇にもたくさんの花が植えてあって、休日は父と母が二人で世話をしていたっけ。


“この狭い塀の中で、季節を感じさせてくれる唯一のものよ”

春は水仙。
夏は向日葵。
秋は彼岸花。
冬は山茶花。

不思議と、母が育てる花はどれも生き生きとしていた。

懐かしい・・・


「すいません、私の話なんかしてしまって」

「いや・・・いい。お前の話したいことを話せ」

それが、自分の聞きたいことだから。
今度はいつ、こうした時間が訪れるかわからない。

リヴァイを見上げたサクラの頬を、親指で撫でる。

「なら・・・ひとつだけ」

サクラは、小さい頃に家族で一度だけ訪れた場所の話をした。


ウォール・マリア東部の山にしか咲かないという、とても珍しい花。
咲いてから散るまでが短く、幻の花と呼ばれている。


「私には東洋人の血が流れています。彼らはその花を何よりも大切に愛でていた、と父が言っていました」
「・・・それはどんな花なんだ?」
「私の記憶にしか残っていませんが・・・」


子供の目に映った、鮮やかな光景。

よちよち歩きの弟が花弁の中で嬉しそうに笑っている。
そして、祈るようにその花を見つめる父と母。


「その花が咲く木の前に立つと、空も、風も、大地も、すべてその色に染まるんです」


でも、ウォール・マリアが陥落し、もう見ることができなくなった。
父も、母も、弟もいない。
あれほど美しくて、幸せな光景はもう二度と蘇らない。


「その花の名は・・・」


リヴァイにとっては初めて聞く名前。
そして、永遠に胸に刻まれることとなった。


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