【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第7章 Lavender
「兵長」
その声でリヴァイは我に返った。
目を開けると、サクラが心配そうに顔を覗き込んでいる。
「大丈夫ですか・・・?とても悲しそうなお顔をしていました」
「・・・・・・・・・・・・・・」
手を伸ばして、目の前にある頬に触れた。
そして形を確かめるように、輪郭をなぞる。
なんだ・・・ちゃんとあるじゃないか。
腕を引っ張り、体を抱き寄せた。
不意をつかれてバランスを崩したサクラが、リヴァイの上に倒れこむ。
「兵長?」
なぜ、俺は喪失感に満ちた顔をしていた。
なぜ、あのガキは罪の意識に苛まれていた。
だいたい、あの少年はいったい誰だ。
鼻をくすぐる、サクラの匂い。
何も失ってない。
大切なものはここにある。
「あの・・・だいじょうぶですか?」
「・・・悪い・・・夢とも幻覚ともつかないものを見てた」
サクラの体を支え、隣に座らせる。
そして、肩を抱き寄せた。
突然の行動に、どうしていいかわからなかったのだろう。
初めは体を強張らせていたが、次第に力が抜けてリヴァイに体重を預ける。
「・・・こうしてて平気か? 嫌ならやめるが」
「いえ・・・」
サクラはリヴァイを見上げ、にっこりと笑った。
「でも、兵長以外の人だったら、腕を切り落としていましたけど」
思いがけない冗談に、思わず表情を緩めてしまう。
「そいつぁ・・・怖ぇな」
鎖骨の辺りにあるサクラの髪を撫で、こめかみにキスをした。
彼女の体重と体温を感じると、胸が温かくなるのと同時に締め付けられる。
そうか・・・
これが愛しい、という感情なのかもしれない。
ラベンダーの香りが二人を包み込む。
「この花は、兵長によく似合うと思います」
ふと、サクラが床に落ちていた紫色の花を拾い上げて言った。
「花言葉、というものを知っていますか?」
「・・・知らんな」
「花は、それぞれ言葉を持っているんです」
「ほう・・・」
リヴァイの手が、花を持つサクラの手に重ねられる。
「この花が持つ言葉は、“優美”と“沈黙”です。清潔を保ち、傷を癒すからそう言われています」
華やかではないけれど、凛とした美しさの花。
それでいて、人を癒し、魅了する香りを持つ。
綺麗好きでもある、貴方にぴったり。