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【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati

第7章 Lavender




考えてみれば、あれ以来リヴァイと言葉をかわす機会が無かった。
視線が交わることはあったが、そんな時は会釈する程度に終わっていた。

もうしばらくたつのに、気にかけてくれていたんだ・・・


「あの、ご迷惑でなければ、髪だけ拭かせていただいてもよろしいですか?」

バケツとランプを地面に置いて、ハンカチを取り出す。
そして一礼してから、濡れた前髪を包み込むように優しく拭いた。

嫌がられると思ったが、リヴァイはじっとサクラの手元を見つめているだけ。

「・・・・・・・・・・・・」

サクラは、鍛錬を終えたばかりの筋肉が張った胸に視線を落とした。


服を着ている時は痩せて見えるが、リヴァイの体には無駄な脂肪が一切なく、鋼のような筋肉に覆われている。
また、数え切れないほど壁外で巨人と対戦しているはずなのに、なめらかな皮膚には一つの傷痕もない。

この人は本当に強い・・・

自分も兵士だからこそ、なおのこと“遠く”に感じてしまう。
どう頑張っても肩を並べることなどできないだろう。


そのわずかな表情の変化を察したのか、不意にリヴァイがサクラの手首を握った。

「もういい」

「す、すみません」

サクラは慌てて手を引こうとしたが、放す気配がない。

「兵長?」

「・・・その花はなんだ?」

リヴァイはサクラの足元を見ていた。

そこにはバケツ一杯の、紫色の小さな花弁がたくさんついた花。
花瓶に挿すには多すぎる。


・・・そうだ、もしかしたら喜んでもらえるかもしれない。


「兵長、この後はお暇ですか?」
「・・・? こんな夜更けに用事なんてねぇよ」
「なら、私に少しだけお時間をくれませんか?」

バケツを抱え上げて、花の間からリヴァイに向かって微笑んだ。

「・・・・・・・・・・・・」

まだあどけなさが残る笑顔を前に、眩しそうに目を細める。
こんな顔を見せられ、どうして拒絶できるだろう。


「・・・ああ、構わない」


抱きしめたい、そんな衝動を抑え込みながら頷いた。

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