【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第6章 Untainted, Unbroken ※
壁外調査当日。
サクラは医務室のベッドから窓の外を見ていた。
今日もおそらく調査兵の3割が死ぬだろう。
「アルバートも死ぬのかな・・・」
サクラはアルバートが昨日付けで異動になったことを知らない。
そして、もう二度と2人が顔を合わせることは無かった。
馬の鳴き声が聞こえる。
もう出立の時刻か。
「サクラ〜」
医務室のドアが開き、ハンジ、エルヴィン、そしてリヴァイが入ってきた。
壁外用のマントを着用し、すでに支度は整っている。
「分隊長!団長、それに兵長も」
「気分はいかがかな?」
ハンジは手のひらをサクラの額に当てた。
「うん、熱は無い。手足の痺れも治まっているようだね。おしっこは出た?」
「は、はあ・・・」
「ああ、ごめんごめん、エルヴィンとリヴァイの前じゃ答えにくいよね。でも、そこまで水銀中毒は出なかったようで安心したよ」
これから壁外に行くとは思えないほど、ハンジはいつも通りだ。
むしろ上機嫌のように見える。
さすが・・・と思った。
「サクラ、こちらのことは心配しなくていい。ゆっくりと休んでくれ」
エルヴィンにそう言われ、恐縮しながら頭を下げる。
本当に迷惑をかけてしまって申し訳ない。
本来ならば自分も今頃は同じように壁外調査に備えて身支度を整えていたはずなのに・・・
「じゃ、行ってくるね」
ハンジが明るく手を振る。
「あ、ハンジ分隊長、エルヴィン団長、リヴァイ兵長!」
体を起こして、3人に向かい握った拳を心臓に当てた。
「作戦の成功をお祈りしております。ご武運を」
ハンジとエルヴィンは柔和に微笑むと、並んで医務室から出て行く。
二人がいなくなった後で、リヴァイもサクラに背を向けた。
「兵長」
足を止め、肩越しに振り向く。
「どうか、ご無事で・・・」
リヴァイは何も言わず、頷いた。
そして、深緑色のマントを翻す。
“自由”を表す、白と黒の重ね翼が力強くはためいた。
第6章 『 Untainted, Unbroken 』 fin.