【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第6章 Untainted, Unbroken ※
カツン、カツンと石畳廊下に足音が響く。
壁外調査前日とあって、やけに静まり返った兵舎。
リヴァイはエルヴィンの執務室をノックすると、返事を待たずにドアを開けた。
「オイ、エルヴィン・・・」
言いかけて、止める。
部屋にはエルヴィンだけでなく、もう一人の姿があることに気がついたからだ。
「どうした、リヴァイ」
デスクに座っているエルヴィンがリヴァイに気がつき、余裕の笑みを向けた。
その向かいに、恐怖で青ざめた男が立っている。
「・・・ストラングラー」
リヴァイがその名を呟くと、彼は震えながら振り返った。
「リ・・・リヴァイ兵長!」
「・・・・・・・・・・・・」
アルバートの顔を見るだけで、心の中に冷たく暗い影が広がっていく。
殺したい。
その感情を抑えこんだリヴァイは、まるで能面のように不気味で表情のない顔となっていた。
「ちょうど良いところに来たな」
この部屋で唯一、にこやかにしているエルヴィン。
何かの書類にサインしながら、リヴァイを手招いた。
「アルバート・ストラングラー君が本日付けで異動が決まったよ」
「異動・・・?」
リヴァイは横目でアルバートを見た。
ガタガタと震え、今にも失禁するかもしれない。
「どこに」
「駐屯兵団だよ。これからはユトピア区の農業開拓地で、生産者の警備をしてくれる」
「・・・・・・・・・・・・」
ユトピア区とは、ウォール・ローゼ極北地方のこと。
食糧事情・衛生状態が悪く、体の弱い者なら1年ともたない酷寒の地だ。
そこにいる生産者といったら犯罪者か、人類に危険を及ぼす恐れのある者しかいない。
「というわけで、少し急だがよろしく頼むよ、ストラングラー」
「・・・・・・・・・・・・」
呆然としているアルバートに書類を手渡し、残酷に微笑む。
「出立準備があるだろうから、もう下がりたまえ」
「・・・・・・失礼・・・します・・・」
アルバートはぎこちなく団長に頭を下げると、兵士長にも震えながら敬礼をして出て行った。