【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第6章 Untainted, Unbroken ※
予想していた通り、サクラは最後まで犯人の名前を口にしなかった。
エルヴィン達とサクラのやりとりを聞いていたリヴァイは、以前ハンジが言っていたことを思い出す。
サクラ・ブルームという人間は、怒り、憎しみを持たない。
だから、“危うい”と・・・
事実、彼女は今回の件について自分の失態だと言い切った。
自分を傷つけた人間を守っている。
サクラ、お前は俺にこう言ったな。
“兵長は、私の知らない世界にいるような気がするんです”
俺もわからない。
お前は、いったいどういう世界を見ているんだ。
“リヴァイ兵長は・・・とても優しい人ですね”
怒りや憎しみを持たないお前こそが、優しいのではないか。
“そして・・・気が遠くなるほど、強い人・・・・・・”
ああ、気が遠くなりそうだ。
こうして壁に体を預け、自分を抑えつけるように腕を組んでいないと、何をしでかすかわからない。
サクラは結局、自分の命を削ることになっても妊娠を拒んだ。
水銀という猛毒を体に巡らせることを選択した。
サクラ・・・
お前は・・・本当に危うい。
だから誰かが守ってやらないと、いつかお前は自分自身を滅ぼす。
エルヴィンとハンジに続いて医務室を出たリヴァイは、廊下の途中で足を止めた。
「・・・どうした?」
エルヴィンが振り向く。
「もし・・・犯人の検討がついているなら教えろ」
その途端、エルヴィンの目つきが変わった。