【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第6章 Untainted, Unbroken ※
「・・・そうか」
これ以上、何を言っても答えないと判断したのだろう。
エルヴィンはサクラの目を見て困ったように微笑むと、静かに離れた。
すると、今度はハンジが右手に錠剤を持ってそばにやって来る。
「サクラ、さっき言いかけたことなんだけど」
「はい」
「これは緊急避妊薬だ。知っているだろうけど、水銀を含んでいるため中毒症状が出て命に危険が及ぶ可能性もある」
見た目はなんの変哲もない薬だ。
だけど、人の命を左右するほどの力を持っている。
「飲むか、飲まないかはサクラに任せるよ。今回のことで妊娠したとは限らないし・・・」
でも、もし妊娠していたら?
兵団に大きな迷惑をかけてしまう。
だったら、今、その“芽”を摘んでしまった方がいい。
難しい選択ではないはずだ。
ごめんなさい・・・
「・・・頂きます」
ごめんなさい・・・
ハンジから錠剤を受け取り、水で流し込んだ。
ゴロンとした塊が体の奥へと流れていく。
もしかしたら宿っているかもしれない、命を殺すため・・・
サクラは心の中で何度も謝った。
それでも、自分は調査兵でいたい。
団長のため、人類のため、そして死んだ家族のために、この心臓を捧げることが自分の生きる道だと思っている。
そして、それが自分の死ぬ理由だと決めている。
「もう休んだ方がいい。疲れたでしょ」
ハンジがサクラを優しく寝かせ、布団をかけ直す。
すると、エルヴィンも口を開いた。
「サクラ、明日の壁外調査は休め」
「団長・・・!自分は、これくらい・・・」
「これは命令だ。今、君に必要なのは休養だろう」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
サクラは悔しくて唇を噛んだ。