第8章 セブタン島
「ベポは?」
「お昼寝中。あ、夕寝かな?」
「バリカンで刈るなら今のうちだな」
「ダメだよ。シロクマじゃなくなっちゃう」
「今のベポはシロクマじゃないっても言ってたろ」
「でもベポがシロクマでいたいなら尊重してあげないと」
尊重してもあの腹はどうにもならないだろうと思ったが、「ベポを枕にしてお昼寝すると、もこもこが気持ちいいんだよ」とが嬉しそうに言うので、刈るのは思いとどまる。
「キャプテンここ腫れてるよ。熱くなってる。氷持ってこようか?」
シャツを着せた上から背中をそっと触って、は心配そうに言った。
「助かる」
「すぐ持ってくるね。待ってて」
慣れた足取りではパタパタと駆けていく。ポーラータングの中ならもう、杖をつかなくても彼女は自由自在だ。
たまに誰かが物を置きっぱなしにしていると派手に転ぶが、船長が厳しい罰則を設けてからはうっかりをするクルーも減った。
はすぐに袋に入れた氷を持って来て、タオルにくるんでローの背中にあててくれた。じゅっと音がしてとけるんじゃないかと思うくらい熱かった患部が冷やされ、ローは息を吐く。
「ありがとう。だいぶ楽になった」
「災難だったね。誰がキャプテンを花火にしようとしたの?」
なぐさめながら、はケガで弱るローの頭をよしよしと撫でる。無意識に頭をすりよせて、ローはに甘えた。
「俺も知りたい。、あした付き合ってくれるか」
「いいよ」
もう日暮れだ。海軍の捜査が本格的に始まるとしたら夜明けからだろう。
耳のいいなら、彼らが何を話しているか聞き取れるはずだ。