第5章 密航者
「キャプテンの人殺し……っ」
は悲鳴を上げ続ける。予想外の反応にローはうろたえた。
「殺してない、今喋っただろ!」
「首をはねられて生きてる訳ないもん! キャプテンひどい!! マリオンを殺した……っ」
泣き叫ぶの悲鳴に、何ごとかと他のクルーが駆けつけてきた。
「キャプテン人殺したって本当!?」
「マリオンがにセクハラでもしたんですか!?」
「だからって殺すのはやりすぎですよ!」
「ベポ……!!」
は泣きじゃくって駆けつけてきたベポに抱きついた。メタボの腹が邪魔で後ろに手が届いていない。ベポに抱きついてはまだ泣き続けている。号泣だった。
異様なの泣き方と、「死んでない」と小声で訴えるマリオンの首を見比べて、クルーたちは困惑した。
一番困惑しているのは殺人者扱いされているローで、「とにかく早くそいつのパーツを拾ってくっつけろ」と手振りでクルーたちに命じる。
「ちゃん。大丈夫、俺生きてるよ! 君を置いて死ぬわけないだろ」
ペンギンたちに体をくっつけてもらったマリオンが、妙に格好つけてアピールした。
ベポにうながされて、はペタペタと何事もないマリオンに触る。首がくっついていることを何度も確かめて、気が抜けたように座り込んだ。
「キャプテンが手品が得意なのは知ってるけど、ひどいよこんなの……私が見えないからってこんな風にからかうなんて。本当にマリオンが死んじゃったのかと思った。首を刎ねられたら人は生きてられないんだよ……」
泣きじゃくってはローを責め続けた。反射的に謝りそうになるものの、そこまでひどいことをした自覚がなかったローはひたすら困惑する。
には気づかれない手旗信号のサインで、ペンギンが「まだ能力のこと知らないんですか?」と船長に尋ねる。
一回説明しようとして挫折した、とやっぱり手旗信号でローは答えた。
ローが謝るべきか考えている間に、は幻滅したのか再びベポに抱きついて「キャプテンひどいよね?」と味方を増やそうとした。
「ええと、うーん……」
ベポはと船長を見比べておろおろした。