第2章 No.9
パッショーネの組織は人数が多いかつ優秀なため、情報の伝達は警察より速い。
「メールによると、修道院にいた子供の姿が見当たらない線から、“誘拐”が妥当らしい」
「で、今回はその人殺しの暗殺か」
「ああ」
パッショーネがそう判断したのは、ある理由があった。
外国にも轟かせるほどの大事件を起こしたから。
よりによって、世界文化遺産が殺人現場となっては、イタリア国自体が打撃を受けたのも同然。
観光業が下落するどころか、卸売業や運輸や物流にも影響を及ぼしかねない。
その落とし前は、自分たちの利益しか考えない利己的なグループの死で償ってもらうというわけだ。
犯人は子供たちをトラックに積んで、ヴェネチアの船着場に向け逃走している。
そこで密輸される前に、誘拐犯を1人残らず抹殺するのが今回の任務だ。
作戦は、まずホルマジオとギアッチョが一足先にそのトラックの奴らを抹殺し、子供ごとトラックを確保する。
メールに添付されてあった発信機でトラックの居場所がわかる。
奪ったトラックはどこか別の場所へとめて、そこでリゾット、プロシュート、イルーゾォと合流する。
港に待機している残りの誘拐犯を、子供を使っておびき寄せて殺す。
メローネはもしものために、アジトで待機。必要な時は、スタンド“ベビィ・フェイス”で援護を。
以上だ。
「でもよ、神やら胡散臭い信仰するガキ共を何で狙ったんだ?まさか、ソイツらの趣味ってわけじゃあねえよな?」
ホルマジオは冗談じみたことを抜かすが、もちろん決して本気で思ってるわけではない。
「修道院で飼われていた子供達は、普通じゃあないんだ」
「?」
そして、今に至る。
「余計な抵抗をすればどうなるかは、もう分かっているな?」
プロシュートの威圧に、最初はビクビクしてた子供が大人しくなった。
最初の1人目が降りてくると、2人はメローネが言った言葉の意味を理解した。
(コイツは…)
左目は青で右目は茶色のオッドアイ。
次の子は髪も肌も瞳も白い。
赤い髪の少年。
イタリア人ではない異国出身。
どれも見た目は普通ではない子ばかり。
この少年少女が、人身売買グループが大事件を起こしてまで欲しがる商品だ。