第3章 お前は誰だ?
「半径20km内くらいの範囲で探したが、どこにもいねえ。薄っぺらいカーペットの裏の塵も凝視したくらい細かく見たがよォ~」
「…そうか。ご苦労だった」
早朝からの運転にここまでやってもらい、このチームの中でギアッチョが今日一番従事している。
スタンド能力も長時間使えばかなりの疲労がたまる。
その分イライラもたまっている。ギアッチョは元からキレている性格だというのに。
リゾットはギアッチョに少し休めと命令した。
ホルマジオは頭の後ろで手を組んで、「あ~あ」と呆れた声を出した。
「じゃ俺たちはまた振り出しに戻ったってわけか?見つかれば、これ以上苦しまなくて済んだのにな~?」
ホルマジオはメーラの後ろに回り、足の傷のあたりを思いっきり踏んだ。
「!!」
メーラは身をよじらせて、口をぱくぱくさせた。
ホルマジオの氷の手錠をされている限り、逃れられない。
「お~い、そろそろ喋って楽になれよ。俺の超自慢のブランド靴の裏が真っ赤に染まっちまう前によ。自分が子供の姿だからって、図に乗るなよ」
グリグリと体重をかけて、出血がさらに酷くなる。
メーラは痛みの意識を少しでも分散させようと、無意識に体全体が震えていた。
ただ、声は未だに出ていなかった。リゾットはそこが一番気になった。
(痛覚があるのは明白なのに、うなり声一つもあげない。やはりおかしい。ん?)
首元には、
・・・・
マフラーが巻いてある。まさか…!
ズカズカ
リゾットは急に動き出して、ホルマジオを制して、メーラの首元をいきなり掴んだ。
「!!」
その場は凍り付いた。
「ど、どうしたんだ、リゾット?」
冷静沈着なリゾット・ネェロが急に動き出し、いきなり標的の首を絞めた。
いや、絞めたというより、触れていると表した方が正しい。
空腹の子供がピッツァにがっつくような勢いでだ。
その行動にどんな意図があるのかと、皆は疑問を抱いた。
(待てよ。首を触ったっつーことは……)
プロシュートにも心当たりがあった。
「………やはり、
・・・・・・・・・・・
そういうことだったのか」
リゾットはメーラのマフラーをはいで、手を離した。
『!?』
首元には、深い切り傷があった。
つまり、その子は
・・・・・・・・
喋れないのだった。