第2章 No.9
「早かったな」
廃墟の庭からプロシュートがやってきて、荷台の中を確認した。
子供たちはさらに怯えて荷台の奥に詰め寄った。
・・・・
「コイツらが例のガキ共か」
「ああ、間違いねえぜ。トラックを運転してた奴らもクロだった。もちろんとっくに“ぶっ殺した”ぜ」
話のいきさつはこうだ…
約5時間前の午前3時頃
暗殺チームは夜中にも関わらず、上から任務を課せられた。
メローネが、インターネットを通して組織の上からメッセージが来たと皆に知らせ、打ち合わせをするために皆は一度アジトに集まった。
ホルマジオが最後に着いて、大きなあくびをしながらソファーに腰をかけた。
「遅いぞホルマジオ」
プロシュートが一言注意した。
「悪い悪い。久しぶりの急な召集だからよお。
てかリゾット、もう仕事終わらせて来たのかよ?」
リーダーのリゾットはすでにアジトにいた。組織をかぎ回っている不審な男を始末したばかりだ。
「さっきまで任務だったんだろ?今日は出なくてもいいんじゃあねーか?」
全く寝ていないことで心配するホルマジオは、意外に優しい。
「いや、そうはいかない。さっきメローネから聞いたが、今回の任務はかなり妙だ。俺も出る」
依頼書のメッセージを見た張本人のメローネが、もう一度パソコンのファイルを開いた。
読み上げる直前に表情が曇った。
「数十分前に入った情報だが…『サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会』で虐殺があった」
『!』
サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会。
あの『最後の晩餐』があることで有名な場所であり、この場にいる誰もが知っていた。
ミラノにあるから、電車で5時間ほどで行ける。
そして、殺人現場となったのは正確に言えば、そこに隣接する『ドメニコ会修道院』だった。
「小さいとき行ったことあるぜ俺。マジかよ…」
イルーゾォはたまげた。
「で、殺したのは誰だ?」
プロシュートは冷静にメローネに聞いた。
「“組織”(パッショーネ)の人間からの情報だと、人身売買を目論む誘拐犯らしい。これはまだメディアに公開されてないが、修道院にいる子供を誘拐するためにやったらしい」
「ガキだと?」