第3章 お前は誰だ?
(ハァ~脅しもふざけ話も通用しない…か)
ギアッチョの氷は、今でもその手首をじわじわと凍らせて、てめェの体温を蝕んでるっつーのに、震え一つも起こさないとは。
ガキにしては我慢強いな。
だが、これからの“拷問”に、果たして耐えられるのかよァ?
母親が暖かく包みこむ愛情とは全くの真逆の世界だぜ。ここは。
だが、お前が本当に子供なのか、それをこれから確かめさせてもらうぜ。
ホルマジオは合図で、イルーゾォとプロシュートを呼んだ。
2人も念のため、子供から数メートルほどの距離を空けた。
「目が見えねえのに冷静だな。むしろ、病院の時よりも落ち着いてやがるじゃあねーか。そ、し、て、俺の声は耳が腐るほど聞き飽きているよなあ?手榴弾無口野郎」
イルーゾォはかなり恨みムードでいる。呼び名が長すぎて名前みたいだ。
目を閉じていても分かるくらい、ドスの効いた恨み声だ。
敵の仲間がどんどん増えているのに、以前子供の態度は変わらない。
まるでハナから見えているように、目隠しされたまま周りを見渡していた。
ここでようやくプロシュートが口を開くが、子供に奇妙な質問をした。
「そういえば…さっきから気になっているんだが、お前…
・・・・・・
どこ見てんだ?」
「?」
子供はその言葉に反応を見せ、首を右に30度ほど傾げた。
どうやら、プロシュートが言ったことを理解できないらしい。
(理解できないものや現象は、人に恐怖と無知を知らしめる。何も見えないならなおさらだ)
プロシュートはこの数十秒間で、子供の行動を見極めていた。
(このガキは今、俺たちの位置を“声”を頼りに
・
耳で把握していたはずだ)
拘束を解くよりも、敵の人数把握を優先し冷静に状況分析するとは大した奴だ。
声がする度にその方に顔を向けていた。
だが、その中で“妙な動き”が、
・・・・
1つだけあったぜ。
廃墟の建物の1本の主柱のあたりを、ずっとちらちら顔を向けていやがった。
そこには、
・・・・・・・
誰も見えねえぜ。
誰もいねえし声がしない場所を、なぜ何度も顔を向ける?
「そこの柱、気になるのか?
・・・・
お前だけ何か見えるのか?」
「!!」