第2章 No.9
「…なぁ~、随分ひでえ話じゃねーか?ギアッチョ」
「うっせーぞホルマジオ。運転中話しかけるなクソが」
午前8時頃。
ホルマジオは助手席で堂々と前に足をかけて、あくびをしながら朝刊をまじまじ読んでいた。
「けェ~、俺たち暗殺チームが言っちゃしまいだが、子供目当ての犯行なのに、こんな容赦なく大人も殺すとはねえ」
「だからッ運転中だってんだろッ!てめーの能力でおつむも聴力も小さくなってんのか?!」
キキィッ!
「うおっ!」
曲がり角をわざと荒く曲がって、ホルマジオを黙らせる。
ザザー…ガザザッ…ピッ
「くそッ!何でよォ?この車のラジオはこんな電波の入りが悪ぃんだよォ!?ポンコツ電機!」
ガンッ!ガァンッ!
ギアッチョはハンドルを握ってない方の手で、ラジオを殴る。
(ハァー、しっかし、この事件何か妙だな…)
ホルマジオは広げている新聞の記事で、引っかかることがあった。
血が飛び散った跡がくっきり残った現場写真のことだ。
無残に殺されたのがはっきり分かる。血痕など殺害の証拠はなるべく隠すのが普通だ。だが犯人は、
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わざと残したのだ。
まるで、
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怨恨を込めた形跡のようにも見える。
暗殺家業をやっているせいか、不思議とそんな勘が働く。
(室内がこんな血塗れになるくれェなぶり殺したのかよ。犯人…よほど残忍な奴らしいな……)
しかもよりによって、神とやら信じて人を救済へと導くシスター様をなァ。
そしてさらに10分後、ある廃墟に車を止めた。
そこは元は病院だった施設。かなり薄汚く、誰も住んでないし、好き好んで近寄ってもこない場所だ。
「おいホルマジオ。俺が運転したからてめーが様子見てこい」
親指でトラックの後ろの荷台を指した。
「しょ~がねえ~なぁ~っ」
トラックから降りて、後ろの大きな荷台の扉を開けた。
「よぉ。お目覚めの時間だぜ」
底に積まれていたのは荷物なんかではなく、恐怖に震え死んだような目をした少年少女。
実はこのトラックは、その誘拐犯たちが使っていたものだった…