第2章 No.9
「あの日本人のガキだ!信じられねェが奴が……」
リゾットは手のひらを出し、興奮しているイルーゾォを制する。
「落ち着け。さっき俺も鉢合わせしたから分かっている。確かに信じられねェが、事実だ。アイツはスタンド使いで、俺たちの目を盗んで、子供たち全員を連れ出した」
リゾットは淡々と状況を説明する。
「……す、すまねェ。俺のミスだ。処罰なら後でいくらでも…」
「いや、気にするな。誰もあんな子供がスタンド使いとは思わない」
傲慢なイルーゾォでも、さすがに今回の失態は堪えて、素直だった。
しかも子供相手に、無敵のマン・イン・ザ・ミラーを打ち破られたとなっては、これ以上の屈辱はない。
「そして謝罪よりも他にやるべきことがある。時間がないから手短に話す。お前はすぐ2階へ行き、マン・イン・ザ・ミラーで、再びあの日本人の子供を鏡の中に捕らえろ。ただし、
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スタンドと銃の中の弾は許可するな。鏡の中の密室で、お前の安否が危うくなるのは避けたい」
「銃だと…?」
「隠し持っていた。だが俺もホルマジオも無事だ」
仲間が無事なのはよかったが、しかしリゾットには、腑に落ちないことがあった。
(あの子供。銃を持っていたのなら、
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なぜそれでイルーゾォに
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トドメを刺さなかった?)
未だに子供のスタンドの実体は知らない。
仮に殺すほどの能力がないとしても、確実に殺せる武器があるなら、なぜそれを使わなかった?
しかも4階で鉢合わせしたさっきも、地面に打ち込んで道を塞ぐだけで、
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直接は撃ってこなかった。
もしどちらかを確実に撃って負傷させれば、もっと時間稼ぎはできたはずなのに。
(あの子供…まさか……)