第2章 No.9
「何も言わねェってことは、殺される覚悟があるってことか?」
「……」
子供を持ち上げて、面と向かうと、ある些細な疑問を抱く。
(ん?10歳くらいの坊主にしちゃあ、ちと
・・・・・・・・
軽過ぎやしねェか?)
イルーゾォは手を離して、今度は子供の前髪を掴んで上げた。
子供の目元が露わになり、顔がはっきりと見えた。
二重瞼で涙袋も大きく、つぶらな瞳。薬師丸ひろ子か山口智子のような日本人だ。
そして、死んでいない目をしていた。他の子供たちとは全く違う。
暗殺者数人に喧嘩をふっかけるほどの、生きた目をしている。
(ん?コイツ、小娘か?てっきり小僧かと思ったが、まあそんなことはいいか)
女子供だろうと容赦はしねェと言いたいとこだが、拷問でも深手を負わせるなとも言われてんだよなァ。
イルーゾォは子供と睨み合いを続け、前髪を離した。
その瞬間を狙い、子供は体勢を立て直して、イルーゾォに回し蹴りをする。
「うぉっと!」
イルーゾォは『マン・イン・ザ・ミラー』で防御して、子供の脚を掴んだ。
しかし子供は掴まれた脚を軸にして、そのまま体を宙に浮かせ、反対の脚でさらなる不意打ちを狙う。
だがまたもや防御された。まだ発達してない子供の短い足では、リーチが短いのだ。
「ハンッ!バカな…!生身の人間がスタンドに勝てるわけねェだろ?」
両脚を掴んで『マン・イン・ザ・ミラー』でぶん投げ、子供はうまく着地した。
イルーゾォとの距離は、大体4mほど空いた。
(だが正直、少し驚いたぜ。体の使い方がハイテクだ…!鬼ごっこやかくれんぼ毎日やっているだけじゃあ、こんな動き、断じてできねェ…!)
「お前が他の奴らとは違うのは認めてやる。度胸も技術も大したもんだ。だが、今の手応えで分かっただろう?お前はスタンドが手元にない限り、さっきの小細工ができねェってな」
まだ未知数な子供のスタンド。その実体でさえまだ見ていない。
能力も分からず恐怖心も拭えない。だからこそ、手加減をせず徹底してやることに決めたのだ。
見つけたらすぐに鏡の中の世界へ引きずり込むことを。