第2章 No.9
「え?……でも、さっきの男の人、悪い人じゃあなさそうに見えたけど…むしろ、優しかったよ…?」
メーラは恐怖を軽減させる仕草として、癖で首元のマフラーに触れる。
ルーティンをすることで、心を落ち着かせた。
(あの黒い長身の男。確か、リゾットって呼ばれていた。あの男のそばを横切ったら、
・・・・・・
能力が消えた……)
相手の能力を打ち消す能力か?いや、そうでなければ……
ジーット
『?』
誰かの視線を感じる。そんなはずはない。レディオヘッドでぶっ放した高周波で、今は誰も動けないはず。
この状況下でここに来れるわけがな……
(え……?)
そうだ。5階でも、同じ手口で閉じこめられたんだ。
・・・・・
鏡の世界に。
バァーンッ!
(バカな。何で…
・・・・・・・
起きているんだ?)
窓ガラスに“あの男”が写っていた。鏡の中に引きずりこむ、スタンド使いだ!
「メーラ?どうし……」
ダァンッ!パリーンッ!
「!」
メーラはスタンドの右拳で鏡を割り、レイチェルの手首を掴んでまた走った。
「ちょっ…!どうしたの急に?!」
『フッ。
・・・・・・・・・・・
鏡の中の俺を見た時点で、お前はもう負けているんだ』
ガシッ!
メーラの腕に突如掴まれたような跡がついた。
その部分がどんどん広がっていき、姿が消えていく。
「メーラ!!」
『黒いガキ
・・・・・
本体だけが入ることを、許可するゥ!!』
メーラはレイチェルの目の前から姿を消し、鏡の世界に引きずり込まれた。
早々に地面に押し付けられた。
「ハンッ!ようやく捕まえたぜ。さっきは小賢しいまねしてくれたじゃあねェか?えェ?このガキがよォ?」
イルーゾォはかなりのご立腹で、子供をうつ伏せで地面に叩きつけて、座布団のようにどかっと座った。
(ッ!)
「まだ生きているだけでも救いだぜ?お前がガキ共をどこに隠したのかをゲロさせろって、言われてなぁ。まだ殺すわけにはいかねェんでな?」
体重をかけてさらに痛めつける。