第2章 No.9
レイチェルは今にも泣きそうな顔をする。涙声で必死に訴える。
「…あ…アナタもいなくなったら…私…とても怖いよ…だから一緒に来てよ。アナタがいれば何も怖くないんだ……死んでも怖くないんだよ」
メーラの手を握り震えた声でお願いしても、メーラは首を縦には振らない。
““アンタの弱虫に付き合ってられない””
首ではなく、手を振り払った。
““君の純粋な未来の中に、私のような不純物は必要ない。どんなものを利用してでも、何としても生きなきゃあいけない””
「……死ぬよりつらい日々が待っているとしても?」
““だとしてもだ。死ぬのは許さない。もし死んだら、一生許さない。そしたら、アンタとは絶好する””
「え、そこまでする……?」
““それより、
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さっき持たせた氷は、今もちゃんと持っているね?””
「う、うん」
レイチェルの小さな手のひらには、ビニール袋で包んである氷が入っていた。
(……この2階には、“老化”させるガスがまだ充満している。あれほどの高周波を一番近くで受けたにも関わらず、まだ解除されていない)
あの金髪で碧眼の男。流石はパッショーネのギャングだ。ここに来られるのも、時間の問題だ。
““レイチェル。これから私が指示した通りに動いてもらう。いや、実際は極力
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動かないようようにしてくれ。君を必ず、安全な場所へ送るから”
メーラはスタンドを出した。
ズキンッ!
(!)
頭に電気が走ったような鋭い痛みがして、顔を覆ってよろめく。
「ど、どうしたの?!」
““私より自分の心配をしな。アンタは私とは違うんだ””
「……メーラ…とても……顔色が悪いよ?」
““……分かる?実は私も怖い。さっきの男に言われた通り。あの男は危険だ。一刻も早く、ここから逃げなきゃあいけない””
スタンドを振り絞って、最後の仕上げに取りかかる。が、違和感を覚えた。
(え、何…?
・・・・・
発動しない…?!)