第2章 No.9
「!」
確かに、自由に移動できるならこんな人がいるところではなく外に逃げ出せば済む話だ。
それをしない、もしくはできないということは、能力の範囲にそれなりの限度があるのか?
ホルマジオは疲労の線も考えたが、まずはプロシュートの推測を黙って聞くことにした。
「8人もいたガキを、スタンド能力で連れて行ったなら、あんな疲れていたことに説明がつく。白い方は全く疲れてなかったからな」
スタンドをフル活動させれば息も体温も上がる。
そしてさっきの奇襲の時、建物内の配置は
屋上にホルマジオ。
5階の子供部屋に監視役のイルーゾォ。
4階にリゾット。
3階にグレイトフル・デッドを操作していたプロシュート。
2階にいれば敵に見つかる可能性があるからだ。
外は、ギアッチョが車の無線機の操作や逃走経路を塞ぐためにいた。スタンド能力の氷で、敵の足止めも容易いからだ。
この中で唯一の死角だった場所は1つしかない。
グレイトフル・デッドのガスが蔓延していた2階だけだ。
誘拐犯どもが確実にくたばってガスの能力を解除して、死体を回収しに2階に下りたまでに1分ほどのインターバルがあった。
スタンド操作をしていたプロシュートははっきり覚えていた。
その間はちょうど、ホルマジオが豆まきのように暗殺してた間で、プロシュートはそれを3階で1分間ほど目視していた。
信じられないが、そのたった1分間でアルビノの子を除き全員を2階へ連れ出したんだ。
「おいちょっと待て。それ以前に不自然なことがあるぜ」
ギアッチョはある疑問を口を出した。
「何でお前はそこまで2階にこだわる?疲れていたから、こっから10km、100km先に移動できないと断定するには少し強引な気がするぜ」
プロシュートはさっき拾った通信機を2人に見せた。
病院内しか使えず外部との連絡は不可能な仕組みのものだ。
「これは奇襲が始まる前に、廊下で見つけた物だ。その時はあまり気にかけなかったが、今考えれば不自然だった」
そして、元は診察室だった数部屋を指差した。
「各部屋にはきちっとしまわれている道具の中で、何で“これだけ”が廊下に落ちていた?」
『!』
他に不自然な点はいくつかあった。
「この通信機、さっきは切れていたのに
・・
今は電源がついている」