第2章 No.9
写真に写っている台所は、かつて自分たちがシスターたちとクッキーを焼いた調理場でもあった。
そこはオオマグロでも捌いたかのような殺人現場と化している。
大人を覆い被さるくらいの大きい白い布が、台所の地面に写っている。きっとそこに……
「う……う…」
愛する人を失い悲しみに暮れるその畏敬の姿は、神秘的だった。
大人になったら、すごい美人になるだろう。
人身売買なんて下らないと思うリゾットでも、アルビノの妖艶の魅力というのを直接目で見た。
(だが、黒髪の子供の方は全く悲しんでいないな……)
「夜中…変な人たちが…私たちを襲って、物のようにトラックに積んで…きっと…シスターたちは無事だって……信じていたのに……」
その子供の涙は、そのシスターの笑顔を思い出してのことか。それとも、楽しかった修道院での生活を思い出してのことか。
「ひどい、だ、誰が…そんなことを……」
アルビノの子は新聞の切れ端を拾い上げ、悔しい分握り締める。
・・・・・
「今のところ、お前達を拉致した誘拐犯の仕業らしい。お前たちに薬か何かを盛り拘束した後、口封じで始末した。そう考えるのが妥当だ」
とは言いつつ、リゾットは口元に手を添えて考える素振りをする。
未だにどうしても納得できないのだ。
(こうもあっさりと殺せた相手が、あの修道院の事件を起こせるとは到底思えない)
仕事柄やはり、本能的に違うと感じる。
殺したのは、
・・・・・・・
もっと別の人間。
それが複数人なのか、単独なのかは分からんが。少なくとも、直接現場に行って見てみなければ、何とも言えない。
人を殺すというのは、その周りの者の世界をも狂わせるのと同義だ。
・・
俺は両方を体感したことがあるから、よく知っている。
お前たちが巻き込まれたのは、つまりはそういう世界だ。