第2章 No.9
「野生動物が住みついても不思議じゃねえだろ。お前のことだから猫に好かれねえから、逃げたんだろ」
「いやいや、猫じゃねーよ。でけえ猫というか何というか…」
「リゾット!港の奴らと通信が繋がった!」
トラックの通信機をずっといじっていたギアッチョがキレ気味で来た。
なかなか繋がらなかったので、かなり苛ついていた。
「30分もしねえうちに来る。『非常事態で来てくれ』と打っただけで、すぐ信じた。よほどガキ共が届いてこねぇことに焦ってたぜ」
「人数は?」
「30だ」
(思ったより多いな…)
暗殺は本業だが、向こうは誘拐のプロ。
朝刊にダイナミックに載っていた殺人現場の写真。
あれは“殺し”も専門外ってわけでもないと示唆している。
ここは慎重に…
「なら作戦は…」
リゾットは皆に作戦を伝え、皆はそれぞれの持ち場に行く。
カタッ
「?」
プロシュートは2階で、何かを踏んだ感触がして、足元をみたら奇妙なものが落ちていた。
(何だ?この通信機のような機械は?)
拾ってみると側面に『病院用』とラベルが張ってあった。
(ここで使われていたものか)
廊下に沿って点々とある部屋を見てまわると、放送マイクなどの電子機器もある。
ここは元々かなり設備の整った病院で、急患をすぐ処置できるようあらゆるものが揃っていた。
今は廃墟だが、よく見ると建物の構想や内装に高級感の面影がある。
修道院といい病院といい、人を救済する場が人殺しの場になるとは…
リゾットの言うとおり、今回の任務は異例だ…
30分後…
キキィッ!
病院の門の外に別の大型車がとまった。
中から30人の男たちが溢れるように出てきた。
「おい!あれは…!」
そばにあるもう一つの大型車を見つけて、急いで荷台を開けた。
しかし子供はいない。さっきまで繋がってた通信機も反応がない。
「おい!通信はどうなってる!2人は一体なぜこんな建物の中に籠もる必要がある?!」
トラックに乗ってた仲間の姿が見当たらない。あの廃墟にいるのか?
「まさか…人質に取られた可能性も…!」
誘拐犯たちは2列になって、先頭の合図で廃墟に中に入った。
軍人がテロ組織のアジトに入っていくように、スピーディーかつ慎重に。
しかし2階に上がった途端、急に蒸し暑さを感じた。