第2章 No.9
「余計なことは言うな。今は子供を見張ることに専念しろ」
「はいよ」
最後のチェックだ。
(ん?この子供…)
最後はNo.9。日本人のガキ。
第二次世界大戦でイタリアとは三国同盟を組んでいた国か。
(短い黒髪。だが前髪は長く、顔ははっきり見えない。さっきとは正反対だ)
ホルマジオと同じようなことを考えていた。
(日本人のガキは密輸船か何かで“ここ”(イタリア)に来たのか?それともここに住んでいたのか?まあそんなことはいいか)
他に特徴は、オレンジに黒いラインの模様がついたレインコートと赤いマフラーを身に付けている。雨も降ってないし、夏なのに。
他の子は修道院らしい服装なのに、無言のリゾットはそこが少し気になった。
「そういや、ジャポネーゼは人気だから高く売れるって聞いたことあるな」
「……」
その子はイルーゾォの言葉に全く反応せず、何故か周りをキョロキョロ観察していた。
人が迷路に迷い込んだ時のように。それか、何かを探しているように。
「入れ」
声をかけられ、子供はリゾットと目を合わせた。
長い前髪の中に垣間見えるその目は…
そして言う通りに部屋の中に入り、イルーゾォは鍵を閉めた。
「あとは、お前のマン・イン・ザ・ミラーで閉じ込めておけ。念のためだ」
「え!おいおい。たかが10にも満たねえガキだろ。俺がドアの前で見張ってれば十分だろ?何の念だよ?」
イルーゾォの性格は傲慢で格下の相手を見下す悪いクセがある。
「敵に襲撃された時の念だ」
イルーゾォはため息を付いた。
(そのために、わざわざガキを最上階まで運んだってーのにな…)
「分かった。襲撃されたとしても、俺のスタンドの前では無力だがな」
部屋の中に入り早速仕事に取りかかった。
その部屋は檻よりはまだマシだが、窓も換気口もない。
唯一の出口は、中に入る際に使うドア1つだけ。
見張りがいる限り、出ることは不可能。
リゾットは2階にいる別の仲間に合流するため、薄汚い階段を下りた。
また一つ気になりながら。
(最後の奴だけ、目が死んでいなかったな…)